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判例

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)に関する判例


2014.05.03判例

名古屋高裁平成23年3月18日判決 被害者 :32歳男性 症 状 :左腸骨骨折、外傷性硬膜外血腫等で脳脊髄液減少症 損害賠償

この事件では、32歳の男性が、歩道線内側を歩行中、乗用車に衝突され、左腸骨骨折、外傷性硬膜外血腫等で脳脊髄液減少症等後遺障害を残したとして約1,900万円の損害賠償を求めて訴えを提起しました。

ところが、1審津地裁伊勢支部は、脳脊髄液減少症との診断が本件事故後3年程度経過してからなされたこと等から本件事故と脳脊髄液減少症との因果関係を否定しました。
これに対し、名古屋高裁は、この男性が、事故の直後から一貫して頭痛を訴え、特にその頭痛は起立時に増強することを訴えていたこと等から、男性の症状は、起立性の強い頭痛が本件事故直後から発生していること、また、髄液の漏出が客観的方法によって確認されていること等から、本件事故と外傷性脳脊髄液減少症との間の因果関係を認めました。

交通事故に基づいて低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)を発症したとき,加害者等に損害賠償を請求していくために必要な法律上の要件がいくつかありますが,特に問題となる要件は,その損害が事故に起因していること(因果関係)です。
これまでの裁判例においては本症例を否定する傾向が続いていましたが、本判例とその後の同時期の大阪高裁平成23年7月22日判決においては、本症例の因果関係が認められています。しかしながら、これら二つの判例の後も、地裁レベルで本症例を否定する厳しい判決が出ていますので未だ本症例についての見解は一致をみたとは言えません。

現在、厚生労働省の脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班が、脳脊髄液減少症(漏出症)の診断基準を作成しているとのことですが、同基準の発表があれば、今後、裁判所においても、その基準に従うことが予想されますので、まずは広く本症例を認めるような基準の発表が待たれるところです。
しかし、本症例に関しては、これまで医学界の見解の一致がみられず、また、本症例の否定判決が相次いでいたことなどから、現段階では、残念ながら損保料率機構や保険会社との交渉レベルで本症例が認められることは非常に困難と言わざるを得ません。そのため、本症例の治療費を請求し、本症例を原因とした後遺障害の認定を受けるためには、裁判を提起し、裁判所で認めてもらうことが必要です。

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